1943年に「 姿三四郎 」で監督デビューを果たし、1950年に「 羅生門 」でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞したことで、” 世界のクロサワ “として世界的な有名映画監督となった巨匠・黒澤明。
映画界のレジェンドとして今なお語り継がれる黒澤の作品には、それぞれに全く違った魅力があり、没後25年以上経った今でも多くの映画ファンの心に感動を与えている。
映画ファンであれば、黒澤作品は“ 一度は通る道 ”といっても過言ではないだろう。
「 生きる 」(1952)や「 七人の侍 」(1954)など、誰もが知る名作が世に多く残されており、その斬新なストーリー構成や革新的な撮影技法は、映画界に大きな影響を与えることとなった。
今回は、そんな黒澤明監督の全30作品を一挙ご紹介。
見どころや撮影秘話に注目しながら、ぜひ一緒に黒澤明の歴史を辿ってみよう。
黒澤明の監督作品一覧

黒澤明の監督作品は以下の通り(全30作品)。
- 姿三四郎(1943年)
- 一番美しく(1944)
- 續姿三四郎(1945)
- 虎の尾を踏む男達(1945)
- わが青春に悔なし(1946)
- 素晴らしき日曜日(1947)
- 醉いどれ天使(1948)
- 静かなる決闘(1949)
- 野良犬(1949)
- 醜聞 スキャンダル(1950)
- 羅生門(1950)
- 白痴(1951)
- 生きる(1952)
- 七人の侍(1954)
- 生きものの記録(1955)
- 蜘蛛巣城(1957)
- どん底(1957)
- 隠し砦の三悪人(1958)
- 悪い奴ほどよく眠る(1960)
- 用心棒(1961)
- 椿三十郎(1962)
- 天国と地獄(1963)
- 赤ひげ(1965)
- どですかでん(1970)
- デルス・ウザーラ(1975)
- 影武者(1980)
- 乱(1985)
- 夢(1990)
- 八月の狂詩曲(1990)
- まあだだよ(1993)
姿三四郎(1943)

公開日
1943年3月25日
上映時間
97分
キャスト
- 黒澤明(監督)
- 志村喬
- 青山杉作
- 藤田進
- 大河内伝次郎
- 月形龍之介
- 轟夕起子
- 花井蘭子
- 小杉義男
- 菅井一郎
コメント
直木賞受賞作家である富田常雄の長編小説を原作とした本作は、黒澤明の記念すべき監督デビュー作品。
柔道家を目指して田舎から上京してきた青年・三四郎が、柔道を通して自分自身の弱さと向き合い、仲間やライバルとともに人間的成長を遂げるストーリーだ。
気性が荒く、暴れん坊であった三四郎が師匠・矢野との関わりの中で心を改める場面や、試合中の事故により引き起こされる葛藤など、見応え抜群の展開を見せる。
のちに有名となる黒澤作品の片鱗が見える本作は、当時戦時中であったこともあり、厳しい検閲により映画制作が制限されていたなかで、持ち前の粘り強さを見せ黒澤がやっとの思いで掴み取った監督作だ。
戦時下にもかかわらず大ヒットした本作は、若き日の黒澤のみずみずしい才能を感じることができるだろう。
一番美しく(1944)

公開日
1944年4月13日
上映時間
85分
キャスト
- 黒澤明(監督)
- 志村喬
- 矢口陽子
- 清川荘司
- 菅井一郎
- 入江たか子
- 谷間小百合
- 尾崎幸子
- 西垣シヅ子
- 鈴木あさ子
- 登山晴子
- 増愛子
コメント
1944年に公開された本作は、第二次世界大戦真っ只中の日本が舞台。
挺身隊の少女たちが、兵器に使用する光学機器を作る軍需工場で働く姿をリアルに描く。
本作は、新人女優を実際に挺身隊として入寮させ、訓練や寮生活を共同で行わせることによって、より現実的なお芝居を追求したドキュメンタリーチックな作品となっている。
「 二十四の瞳 」(1954)の監督で、黒澤と同期の木下惠介からも好評であったと言われる映画だ。
第二次世界大戦という大きな背景と、懸命に働く少女たちのコントラストが感動をもたらしてくれる。
續姿三四郎(1945)

公開日
1945年5月3日
上映時間
82分
キャスト
- 黒澤明(監督)
- 藤田進
- 大河内伝次郎
- 河野秋武
- 月形龍之介
- 轟夕起子
- 志村喬
- 森雅之
- 清川荘司
コメント
黒澤の監督デビュー作「 姿三四郎 」の大ヒットを受け、続編となる「 續姿三四郎 」が1945年に公開された。
前作でライバルたちに勝利し旅に出ていた三四郎と、三四郎に敗れた兄のために復讐を企む弟・鉄心が闘いを繰り広げるストーリーだ。
前作で登場したお馴染みのキャラクターが多数再演しているため、姿三四郎ファンはそれだけで見る価値があるだろう。