「 余命10年 」考察レビュー
「 新聞記者 」「 ヤクザと家族 」「 アバランチ 」などの、硬派かつ社会派な作品で知られる藤井道人監督による王道ラブストーリー。
小松菜奈と坂口健太郎という実力派俳優を主演に据えるほか、松重豊やリリー・フランキー、田中哲司など脇を固める俳優陣も豪華。
音楽はRADWINPSが担当し、美しくも切ない作品世界に華を添える。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
余命10年
公開日
2022年3月4日
上映時間
125分
キャスト
- 藤井道人(監督)
- 小松菜奈
- 坂口健太郎
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー
今作はいわゆる「 病気悲恋もの 」
10年の生存例がほとんどない不治の病を患った主人公が、親・友人・恋人の愛情に支えられながら、ひたむきに短い時間を生き抜く物語です。
ストーリー展開は王道と言えるでしょう。
原作とは大きく変わっている点もあります。
重要なポイントの多くは抑えつつ、より多くの共感を得やすいよう、上手く「 改良 」されていたかと思います。
全編を通して、絶えず移ろっていく四季の描写と演出が実に巧みでした。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていくと言わんばかりのカット割り。
海ではしゃいだり、花火をしたり、クリスマス会を開いて初詣に出かけたり。
幸せな時間が過ぎ去っていくたび、鑑賞する私たちは彼女に終わりが近づいているという事実の残酷さに、胸の奥を詰まらせます。
過剰なまでに美しい四季の描写(桜や紅葉)も、ありふれた日常が美しく尊いものであると知る主人公の心理を、これ以上ないほどに表現していた。
美しく切ない感動を与えてくれる今作ですが、あえて難点をあげるのであれば、終盤の「 死ぬのが怖くなる 」というセリフにより深く重い意味も持たせるために、
ストーリー序盤、彼女の死に対する向き合い方をハッキリと描いていたらよかったかなと思います。
まとめ
エンドロールの冒頭をご覧になった方や、原作を読んだ方はご存じだと思いますが、原作者である小坂流加さんは今作を書き上げたのち、出版を待つことなく病気によって逝去されています。
これは想像でしかありませんが、高林茉莉の物語は、そのまま小坂流加の物語であったのではないでしょうか。
生きた証を残す。
そんな切実な熱量が込められた原作を、あるいは高林茉莉(小坂流加)の生き様を、美しさと残酷さの両輪で真摯に描いていた作品でした。