「 ライトハウス 」考察レビュー、灯台守2人の実話サイコスリラー
文・ライター:@小松糸
A24が送る、ベテラン灯台守と新人によるサイコホラー。
嵐によって島に閉じ込められた2人は、やがて真っ黒な闇に染まっていく。
ライトハウス
公開日
2021年7月9日
原題
The Lighthouse
上映時間
109分(R15指定)
予告編
なし
キャスト
- ロバート・エガース(監督)
- ロバート・パティンソン
- ウィレム・デフォー
公式サイト
感想レビュー
A24史上最も狂っていると噂の今作。
現代サイコホラー最高峰ではないかと思ってしまうほどに狂い・美しかった。
今作は正方形でモノクロ。
この手法が、作品に閉塞感を作り出していた。
登場人物は2人のみ。
ベテラン灯台守のトーマスと、新人のイーフレイム。
島を直撃した嵐により、島に取り残されてしまった2人。
そんな危機的状況なのに、2人は恐ろしく仲が悪い。
地獄のような時間の中で、2人はやがて想像を絶する結末へと走り出す。
劇中の「 カモメ 」は、かなり重要な生き物だ。
トーマス曰く、海鳥には死んだ船乗りの魂が宿っているらしい。
だからイジメたり、殺したりしてはいけないと言う。
しかし、イーフレイムはその約束を破ってしまう。
カモメは人間の言葉を話せない。
意思疎通ができず、ただ空を飛び回り鳴くカモメにとても恐怖を感じてしまった。
トーマスがその約束を破ってから、文字通り風向きが変わり始める。
嵐が到来し、物語の風向きが変わる。
サイコホラーはある種、美しさの部分も兼ね備える必要がある。
という私なりの持論がある。
それらのバランスが絶妙に絡んでいるのは、スタンリー・キューブリックの作品群だ。
今作は、キューブリック作品ぽさを少し感じる瞬間があった。
音、表情、そして状況。
全てがアンバランスで、でも美しく、耳を塞ぎたくなるほどの不協和音。
こんな作品がとても好きだ。
劇中の人魚は、人によって解釈が異なると思った。
2人しかいない男同士の生活の中で、人魚という存在はある意味、現実逃避のような錯覚を起こす。
「 前回の相棒は人魚の幻覚を見て狂って死んだ 」
とトーマスが言うように、人を狂わせ、快楽の海に沈める邪悪な存在。
本当に狂っていたのは、果たしてトーマスかイーフレイムか。
まとめ
今作は実話がベースだ。
灯台守の手記をもとに製作され、こんな過酷な出来事が実際に起きたのかと考えたらゾッとする。
あまりにも衝撃が強かったので、舞台裏のレポートを読んでいたら、キャスト2人に絡むのは、訓練されたカモメだ。
名前は「 レディー 」 「 トランプ 」「 ジョニー 」というらしい。
空を飛びかうカモメは、島付近に生息している野生のカモメ。
劇中で怖い存在として感じたカモメに、名前があったなんて少し愛着を感じた。