映画「 すばらしき世界 」考察レビュー、元受刑者の再犯率の高さから考える社会問題とは?

当ページの画像はIMDbより引用
すばらしき世界
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こんにちは、Johnです。

映画ライフ楽しんでますか?

今回は、ペンネーム(@omi)さんからの投稿レビューです。

この度、こちらで映画レビューを書かせて頂くことになりましたomi(おみ)と申します。

記念すべき初レビューは、先週公開された西川美和監督の5年ぶりの新作「 すばらしき世界 」

13年ぶりに出所した主人公の三上正夫(役所広司)は、履歴書代わりに自身の身分帳をTVプロデューサーの吉澤(長澤まさみ)の元へ送り、自分の母親を探して欲しいと依頼する。

吉澤は三上の元へ津乃田(仲野太賀)を派遣し、彼の社会復帰ドキュメンタリー作成を命じる。

画像の引用元:公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)

目次

すばらしき世界

すばらしき世界
©すばらしき世界

公開日

2021211

上映時間

126

キャスト

  • 西川美和(監督)
  • 役所広司
  • 仲野太賀
  • 橋爪功
  • 六角精児
  • 北村有起哉

予告編

公式サイト

すばらしき世界

作品評価

[rate title=”5つ星”]

[value 3]映像[/value]

[value 5]脚本[/value]

[value 4]キャスト[/value]

[value 3]音楽(BGM)[/value]

[value 4]リピート度[/value]

[value 1]グロ度[/value]

[value 4 end]総合評価[/value]

[/rate]

感想レビュー

すばらしき世界
©すばらしき世界

好きだった点

なぜ人は罪を犯してしまうのか?

何故人は再犯を犯してしまうのか?

「 社会が悪い 」と言うならば、その社会には一体どんな問題点があるのか?

ケン・ローチ監督さながらの切り口で見せる秀逸な脚本でした。

見どころ

役者の演技の質が高い!

役所広司の瞳孔カッ開き威嚇演技は必見です。

考察レビュー

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私は今作を通して、西川監督は大きく分けて3つの社会問題を提起しているのではないかと考えました。(以下ネタバレ有り)

受刑者に対する処遇の問題

出所直前、三上は警察官からの「 被害者に対して申し訳ないと思っているか 」という問いに対して、「 自分は判決を不当だと思っている 」と答えます。

上京後も、役所の受付に対して威圧的な態度を示したり、アパートの階下の騒音に痺れを切らした際には、ゴミを投げ付けて相手を挑発します。

しまいには、オヤジ狩りをする若者2人を、人がいない空き地にてボコボコに殴りつけます。

13年も服役していた三上ですが、彼は罪を悔い改め更生したのでしょうか?

これは否、更生していないと思います。

「 もうムショには戻りたくない 」と嘆きはしますが、被害者やその遺族に対する謝罪は1回もない。

なぜ彼は謝意が持てなかったのか?

それは日本に適切な更生プログラムと、出所後の受け皿がないからだと言えます。

劇中でも「 出所した元受刑者がまた犯罪を犯す可能性 」に触れていましたが、日本の再犯率は48.8%(※2019年犯罪白書参照)と比較的高い数字を保持しています。

一方、率が最も低い20%という数字を誇る国はノルウェーですが(2005RETUR参照)、この差異は何か。

それは、圧倒的に受刑者に対する処遇です。

ノルウェー始め北欧諸国では非厳罰化への動きと共に、受刑者が「 人間らしく 」 扱われるための刑事施設や教育の機会が整っています。

加えて福祉との連携が密接にあるため、出所後の居住地、職場が手厚くサポートされています。

ひとり親家庭に対する問題

物語の前半で三上が私生児かつ施設で育ったことが明かされますが、後にそれこそが三上の凶暴性の原因なのではないか、ということが津乃田によって指摘されます。

父親の認知を得ない子どもに発生する問題の1つに「 父親に扶養の請求が出来ない 」というものがあります。

よって母親が父親に対して養育費を請求することは基本的に難しく、芸者で生計を立てる三上の母親は、金銭面での苦労からやむなく三上を施設に手放したのではないかと推測します。

しかし、もしそのときに国から手厚い支援があったらどうなっていたでしょうか?

ひょっとすると三上は施設に入れられることなく母親と仲良く暮らし、真っ当な職に就いていたかもしれません。

教育の問題

「 レールに乗っている私たちも幸せじゃないから、レールから外れた人に対して容赦なく厳しい 」という旨のことを吉澤が三上に告げる場面があります。

日本人の不寛容さは常軌を逸し始めていると、私自身思うところがあります。

例えば、生活保護を受給する人への「 楽しやがって 」という差別意識や、受刑者に対する「 税金でただ飯を食いやがって 」と

いう嫌悪感など。

もしかしたら自分も生活保護受給者もしくは受刑者になる可能性があるのに、どうしてそのような意識が生まれてしまうのでしょうか?

介護施設で三上と共に働く介護士Aは(名前は失念しました)責任感が強く、お年寄りに優しい介護士ですが、障害を持つ介護士Bの仕事の不出来に苛立ちを覚えて、裏でイジメを行います。

不出来に関して言うならば、その介護施設にいるお年寄りは介護士Bと同じくらい、もしくはそれ以上に出来ないことがあります。

何故介護士Aは介護士Bの不出来にのみ憤るのでしょうか?

これらは全て、日本の教育に問題に由来するのだと私は考えます。

そもそも私たちは私たちが当たり前に有する権利とその平等性について学校で学んでいない。

障害を持つ人々がいるのは知っているけれど、彼らについて何1つ教えてもらっていないのです。

まとめ

すばらしき世界
©すばらしき世界

さてタイトルの「 すばらしき世界 」とは一体何なのでしょうか?

是非劇場へ足を運んで、この映画が示す日本の社会問題について考えてみては?

そして一通り考えた後にどうか「 すばらしい 」という語源の意味を検索してみて下さい。

きっと、あなたの世界の捉え方を変えてくれるはずです。

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記事の監修者

独立系の映画会社 / 最新映画 〜ドキュメンタリーまで、幅広いジャンルを配信中

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