静内との対決の敗北により、トラウマを負ってしまった猿桜。
出稽古にやってきた馬山部屋の力士の執拗な侮辱に晒された猿桜はぶち切れてしまい、暴力沙汰を起こしてしまう。
これまで幾度となく難を脱してきた猿桜だが、今度こそ即刻解雇の窮地に陥る。
そんな絶体絶命の状況を救ったのは、またもや女将の花だった。
花をはじめとして、「 女 」たちの存在感が光った第7話。
角界では排除されがちだが、確かに存在している彼女たちを軸に、本話を見ていきたい。

サンクチュアリ‐聖域‐(第7話)

第7話 – あらすじ
相撲に真面目に取り組み始めた猿桜。その姿にやがて他の力士たちにも影響を与えていく。だが、猿桜は静内との取組での恐怖を克服できず葛藤していた。
公開日
2023年5月4日
上映時間
64分
キャスト
- 一ノ瀬ワタル
- ピエール瀧
- 染谷将太
- 小雪
公式サイト
予告編
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
サンクチュアリ‐聖域‐第7話の見どころ

まず、龍谷部屋の女将・弥生。
八百長をしかけていたことが親方に露見し、ばっさりと追い出される。
自らの女を利用して色を仕掛けたはずが、結果として伊藤に利用され、呆気なく排除されてしまう。
次に猿桜の彼女(?)である七海。
前回で猿桜に恥をかかされてしまった村田に利用され、猿桜への復讐の道具にされてしまう。
3人目は、記者・国嶋。
彼女は犬嶋親方のもとへと出向き、足に縋りついてまで猿桜の処分を取り消すようにと訴える。
6話の見舞いの一幕にもあるように国嶋の猿桜に対する恋慕は明らかで、なりふり構わない姿には成長を感じるが、やはり彼女もまた無力で力士たちの世界には踏み込めない。
こうして弥生と七海と国嶋が無力だったのは、彼女たちがあくまで「 女 」であり、「 母 」ではなかったからだと言えると思う。
角界において女はどうしようもなく無力だ。しかし女は「 母 」というペルソナを獲得することで強大な力を持つことができる。
それはきっと、角界の中心に我が物顔で座る力士たちが「 男 」ではなく「 子 」に過ぎないからだろう。
女は土俵に近づくなと息巻いた彼らは皆、「 母 」の庇護なしでは立ち上がることすらできない「 子 」なのである。
そのことは皮肉にも、もう2人の女たち――猿桜の2人の「母」たちが証明している。
1人目は猿将部屋の女将・花である。
4話でも解雇寸前の猿桜を助けた花だったが、今回もまた見事に暗躍する。
どんな取引があったのかは不明だが、何やら龍谷部屋の親方と過去に何らかの関係があったようで、詳しくは描かれていないものの、それが色恋的なものであることは想像に難くないだろう。
その意味で弥生と花は対照的だ。
母としての責務を全うしようと色を仕掛けた弥生は自分自身を女という道具として扱った。
しかし花は、あくまで母(女将)としての立場に立ちながら、かつて女だったときのカードを切り札として使うことで猿桜を救った。
似ているようで、全く対照的な2人の行動はやはり対照的な結果を生むことになったのである。
そして、最後に語られるべき人がもう1人。
もちろん小瀬清の母(余貴美子)である。
彼女は唐突に猿将部屋を訪れ、部屋から出て行こうとしていた息子に滅茶苦茶な克を入れる。
蹴り飛ばし、押し倒し、びびる息子をしっかりしろと叩きまくる。
そして反撃に転じた息子を見て笑うのだ。
「 いいツラしとるやん、馬鹿たれが 」
その気迫たるや、黒人の彼氏すら驚きで寄せ付けないほど。
あの怪演を目の当たりにして、「 母強ぇ 」とならないわけにはいかないだろう。
まとめ
猿桜は2人の母に背中を押され、復活を遂げる。
恐怖を乗り越え、相撲へ真摯に向き合うようになり、猿桜から生まれる熱は他の力士たちを巻き込んで猿将部屋そのものを大きく変えていく。
また、故郷である北海道・羅臼に帰っていた静内もまた、今は亡き母の面影を確かめることで自らが相撲を取る理由、勝つことの意味を再発見した。
最終話前夜、すべての準備は整った。
あとは子が前へと進み、そのたくましく成長した背中を見せるだけである。

