21連勝で三段目優勝、幕下へと昇進した猿桜はインタビューで答える。
「自分、横綱になる男なんで。角界ぶっ壊―す! ファ――――ック!!!!」
相変わらずの悪童・問題児っぷりである。
いっそここまでいくと清々しい。
村田に教えられた株取引も順調なようで、懐も温いらしい。
そんな感じで有頂天の猿桜は、稽古中、十両に上がってすぐ再び膝を故障してしまい幕下に逆戻りとなった先輩力士・猿谷を遠まわしに侮辱する。
憤る猿河たちだが、当の猿谷は「もういい」と揺るがない。ハードボイルドでかっこいい奴である。
第5話は、そんな愚直に相撲に取り組んできた男・猿谷の物語だ。
サンクチュアリ‐聖域‐(第5話)

第5話 – あらすじ
膝を負傷して理想の相撲が取れなくなった猿谷、一方で、破竹の勢いで連勝する猿桜。猿桜は天狗になり完全にうぬぼれていた。
公開日
2023年5月4日
上映時間
52分
キャスト
- 一ノ瀬ワタル
- ピエール瀧
- 染谷将太
- 小雪
公式サイト
予告編
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
サンクチュアリ‐聖域‐第5話の見どころ
猿谷は病院にて、担当医の口から膝の完治には手術が必要であること、そして手術をすればもう2度と相撲を取ることはできないことを告げられる。
怪我というのは、アスリートにとって最も強大かつ困難な敵と言える。
まして百キロの身体を支える力士の膝ともなれば、相当な負荷がかかってしまうものなのだろう。
努力や根性、もちろんその場しのぎのテーピングやサポーターではどうにもならないほどに、猿谷の肉体は悲鳴を上げていた。
そんな猿谷には妻と子供がいる。
家族を背負って戦っていた男だったのである。
家の前の公園で友達と遊ぶ息子は父の帰宅に、嬉しそうに手を振り、妻は2人目の子供を身籠っている。
力士らしく亭主関白的なところはややあるが、まあ家族の関係は良好らしい。
猿谷は家族に向けた視線に、一体どれほどの想いや感情を込めたのだろう。
相撲だけが人生だった男は、ついに次場所での引退を決断する。
静かな部屋で、「 お疲れ様でした 」という妻の声と、それに応えるように酒を飲み干した猿谷の吐いた吐息が、切なく響く。
泣いても笑っても次が最後。
それは文字通り、猿谷の人生のすべてを乗せた最後の戦いの始まりでもあった。
しかし猿谷は最後の花道――次場所に向けての稽古中、一緒に倒れた猿桜の下敷きとなり膝を負傷してしまう。
一同が騒然となるなか、病院に運ばれた猿谷は医者に土下座をする。
「俺をもう一度土俵に上げてください、お願いします」
朴訥としていてひたすら相撲に打ち込んだ猿谷が見せた、初めての感情だった。
普段はあまり気持ちを表情に出さない人間のどうしようもなく溢れてしまう強い感情というのに、筆者は弱い。
だが、現実はどこまでも残酷に圧し掛かる。
決死の覚悟で臨む初日――対戦相手はあの怪物・静内。
結果は、善戦するも敗北(これまでになく静内を追い込む一番になっている。この臨場感はあえて書かないのでぜひ映像で体験してほしい)。
猿谷は傷めた膝を庇うように歩きながら土俵から退く。
真摯に相撲を追い求め続けた力士の、切なくも偉大な最後だった。
まとめ
猿谷の負傷と引退を自分の責任だと抱え込む猿桜は、猿谷の一件で同部屋の力士たちからは完全につまはじきになってしまうが、国嶋や親方、清水たちに少しずつ支えられてなんとか元気を取り戻す。
待ったなし――力士は後ろに退くことも立ち止まることもできないのである。
そんななか対峙するのは、またも静内(どうやら取組表の作成には、犬嶋親方の陰謀が働いている)。
見ている私たちからすれば、とうとうこの瞬間が来たか…と感慨深いものがある。
どちらが勝ってもただで終わりはしないだろう大一番。
戦端が切られる間際、静内は不気味に笑う。勝負の行方は次回へと持ち越された。
勝負の行方は次回へと持ち越されるあたり、視聴者の気持ちを計算しつくした構成がもはや憎く思えてくる。

