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「 瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった 」考察レビュー

瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった

劇団おぼんろの第19回本公演作品。

今作を含むすべての脚本・演出を手掛けるのは主宰の末原拓馬氏。

高い物語性と路上独り芝居にルーツを持つ独特の表現方法が、注目を浴びている劇団です。

そんな末原氏は本作について「 幸せの権化みたいな物語 」を作りたかったと語ります。

人生に絶望した主人公が、夢の世界を旅することで、生きる希望や意味を取り戻していくという壮大でロマンチックな物語。

冒頭のモノローグ、独自の世界観を感じさせる登場人物たちの幻想的なメイクと衣装。

さらには「 海を盗んできた 」という強烈に魅力的な言葉の力により、グッと物語世界に引き込まれていきました。

目次

瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった

瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった
©︎瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった

公開日

2021年11月12日

上映時間 

152分

キャスト

  • 末原拓馬(脚本・演出)
  • さひがしジュンペイ
  • 塩崎こうせい
  • 末原拓馬
  • 高橋倫平
  • わかばやしめぐみ

予告編

公式サイト

瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった

作品評価

5つ星

映像
(3.5)
脚本
(3.5)
キャスト
(3.5)
音楽(BGM)
(3.5)
リピート度
(3.0)
グロ度
(3.0)
総合評価
(3.0)

感想レビュー

瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった
©︎瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった

登場人物たちによって訴えかけられるメッセージは、シンプルで真っ直ぐ。

決して朽ちることのない友情や他人の幸せを純粋に思う気持ちなど、普段生きていては何処かこそばゆさを感じてしまい、

口には出しづらい感情たちが、切実さを湛える台詞に乗り、真正面から私たちへと伝えられます。

これらはともすれば、少年漫画的な手垢のつきすぎたメッセージのように思えますが、そこは幻想的な世界観を描き切った演出の手腕でしょう。

主人公たちの時間軸を小学五年にした設定や夢というファンタジーな場面がうまく作用していて、くどさを感じずに楽しむことができました。

今作にはもう1つ重要な「 想像力 」というキーワードが随所に存在します。

まず大前提として、劇中の大部分を占める夢の世界は、想像の世界に他なりません。

主人公たちが目を閉じ、想像力によって補うことで様々な光景や匂い、感触を体験するというシーンがあちこちに見られます。

何より、夢の世界を司る神(リュズタン)もまた信じること、つまり、想い馳せることで存在が担保されるのです。

これらには、言葉にすると月並みではありますが、想像力の無限性――ひいては創作への絶大な信頼が表れているのだと感じました。

主人公であるトノキヨは冒頭、「 どうでもいい 」と何度も口にして眠り薬を大量に服用します。

パッとしない48年間の人生に自棄になっているのです。

彼は夢で仲間と出会い、封じていた辛い過去の哀しみを乗り越え、48年前にはやり遂げることの出来なかった夏休みの宿題をリュズタンへと提出します。

旅から帰還し、目を覚ましたトノキヨの少年時代に戻ったようにも思える生気に満ちた表情は、冒頭とはまるで別人でした。

彼は夢=想像世界を経由することでを生きるための活力を手に入れたのです。

メタな話にはなりますが、当然この物語もまた想像の産物です。

トノキヨの経験した7日間の夢の体験は、そのまま観客である私たちの物語体験として受け取ることができます。

夢を経て活力を手に入れたトノキヨ同様に、本作を通じて客席に座る私たちが希望や幸せを抱くことこそ、末原氏の願いであったのではないでしょうか。

まとめ

未だ困難な世界情勢下にある世界。

そうでなくとも、生きていくことは色々な出来事に直面することです。

それは楽しいことや嬉しいことばかりではありません。苦しいことや辛いこと、哀しいことを私たちは日々経験しながら生きています。

しかし、どれほど家に閉じこもろうと、流れるニュースが暗くとも想像力は無限です。

今作は末原氏による人間賛歌であると同時に、創作者としての矜持に溢れた優しい物語でした。

まさしく末原氏の、そして私たちの「 生きる手がかり 」となってくれるような物語となっているのだと思います。




瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった

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