映画ライフ楽しんでますか? 今回は、ペンネーム@パラムさんからの投稿レビューです。
眠り薬で命を絶とうとした初老の男に、ある夏の日の夜、クラゲと名乗る少年が舞い降りた。
その少年の顔に見覚えがあるものの思い出せない男。
だが、クラゲを筆頭にかつての仲間たちとの出会いを通して自らの過去と向き合うことになり…。
画像の引用元:公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
瓶詰めの海は寝室でリュズタンの夢をうたった

公開日
2021年11月12日
上映時間
152分
キャスト
- 末原拓馬(脚本・演出)
- さひがしジュンペイ
- 塩崎こうせい
- 末原拓馬
- 高橋倫平
- わかばやしめぐみ
予告編
公式サイト
作品評価
[rate title=”5つ星”]
[value 4]映像[/value]
[value 4]脚本[/value]
[value 5]キャスト[/value]
[value 4]音楽(BGM)[/value]
[value 4]リピート度[/value]
[value 2]グロ度[/value]
[value 4 end]総合評価[/value]
[/rate]
感想レビュー

冒頭で「 これは夢オチである 」と、ハッキリ観客に伝えることに驚いた。
それは最大の種明かしだと思ったからだ。
ただこれを伝えることで内容が色褪せることは全くといっていいほどない。
むしろ、それを受け止めて見るとより一層物語に深く入り込むことができるのだ。
劇団おぼんろの最大の武器は「 想像 」である。自分たちが見せるのではなく、観客たちに想像を委ねて一緒に物語を紡いでいくのだ。
想像の世界は無限であるから大規模な予算がかかっていなくても、一流の有名人が出ていなくても、想像力を駆使したこの劇団おぼんろの夢の世界には限りがない。
今作でも登場人物はたった5人。
彼らが舞台上でところ狭しと150分近く縦横無尽に動き回り、観客と一緒に描いた夢の世界で大暴れする。
美術セットや照明もとても丁寧に作られているのが分かるし、何より5人が演劇を心から愛していることが伝わってくる。
物語の話をすれば、初老の男が重い体をベッドからおろすシーンから始まる。
ウンザリした顔つきで彼は自殺を試みようとするも、そこへ1人の少年が突然あらわれ持っていた瓶を割ると、あたり一面が海になり裁判シーンへと移っていく。
なんの裁判なのか。
観客はハテナだらけだが、どうやら初老の男は48年前にやり残した夏休みの宿題があるというのだ。
それがどれほど重要な宿題であるかまだ知らない男は、本裁判で議論を繰り広げる少年クラゲとその仲間たち3人から追求されるうちに、
ずっと忘れていたある記憶が蘇ってきて…というもの。
正直、ストーリー展開は冒頭から予想できてしまったものの物語にグイグイ引き込まれていくのを感じた。
それは誰もが知っているピーターパンに通じるものがあったからかもしれない。
ずっと子どものままで夢を見続けていたかったのに大人になってしまった。
それは大抵子どもの頃に思い描いていたものとは全然違った現実味を帯びたなんともつまらないものに成り果てている。
その絶望感がきっと大人になってある程度生きてきた人間なら誰もが少なからず共感できるそれなのだ。
だからこそ、この初老の男の気持ちが分からなくもないし、その後の展開がなんとなく読めたとしても物語の行方が気になるのだと思う。
やがて、初老の男を夢の世界へ連れてきた少年クラゲとその仲間3人が、かつて小学生時代に仲が良かった親友たちだと分かるのだが、
そこからの流れが楽しくもあり悲しくもあり、過去というものはどこまで「 今 」に影響を与えるのかなと思う。
ただ今作では、過去に何があったとしても過ぎ去った出来事に飲み込まれてはいけないということも示唆していて、いつからだって前向きに生きられるということを強く訴え続ける。
登場人物たち誰に感情移入したとしても「 生 」へのエネルギーに満ち溢れていて、大人になるにつれどこかへ置いてきてしまった生きることへの楽しさを思い出させてくれた気がした。
まとめ
なんの心配も不安もなく、ただ友だちと毎日笑って過ごせたら幸せだった子ども時代。
そこから数十年を経て大人として「 今 」を必死で生きている人たち全てに、愛を持って捧げたい作品だ。