映画ライフ楽しんでますか?
今回は、ペンネーム(@吉備だんご)さんからの投稿レビューです。
行き場を失った孤児の少年モモと、孤独な老女マダム・ローザ。
世代と時代を超えたストーリーが描かれる。
「 移民 」という存在を、過去・現在に至るまで考えさせられてしまう作品でした。
画像の引用元:IMDb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
これからの人生

公開日
2020年11月13日
原題
The Life Ahead
上映時間
95分
キャスト
- エドアルド・ポンティ(監督)
- ソフィア・ローレン
- イブラヒマ・ゲイェ
- レナート・カルペンティエリ
- マッシミリアーノ・ロッシ
- アブリル・サモラ
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
感想レビュー

好きだった点
マダム・ローザを演じたソフィア・ローレンの、老いてなお成熟した佇まいと演技力は圧倒的です。
序盤はかつてのセックスシンボルぶりを彷彿させるケバケバしい存在感でして、後半の老いて弱っていく様子が本当にうまい。
ただの老女になっていく様子が何とも物悲しく、彼女の存在感がストーリーの中でスパイスとして効いていました。
モモを演じたイブラヒマ・ゲイェは子役ながらも、憂いを帯びた瞳や、表情の演技が素晴らしいです。
冷めた目で周囲をみる大人びた目線と、母を恋しがって泣く子供らしい面を両立させており、思春期の難しい性格をうまく表現していたと思います。
舞台となった南イタリアの閉塞した雰囲気が、余計にメランコリックさを際立だせており、ストーリーと風景の相乗効果で胸が詰まるシーンが多いです。
嫌いだった点
ストーリー的にはありがちで、展開は予想していた通りのものでした。
ソフィア・ローレンという存在ありきの作品だと言っていいかもしれません。
マダム・ローザ役が他の役者なら、つまらなかったと思います。
見どころ
南イタリアの、明るく開放感にあふれた場所をイメージしていたのですが、地方都市の閉塞感や経済的に停滞した雰囲気が前面に押し出されており、良い意味で意外でした。
この憂鬱な雰囲気が、作品にとてもプラスに働いていたと思います。
主人公の黒人少年モモはセネガルからの移民。
ソフィア・ローレン演じるマダム・ローザも、アウシュビッツから生き延びたユダヤ系イタリア人です。
移民が別天地で生きるということがどれほど大変か。
世代が異なれど今も昔も変わらないことが分かります。
2人は立場と年齢は違いますが、いわば同志ともいえる存在であり、単なる孤児とその保護者という関係性だけでは語れないと思いました。
考察レビュー
モモのイマジナリーフレンド的な存在のライオンがCGで表現され、ストーリー中で何度か登場します。
モモの故郷セネガルや亡き母を思い起こさせるための、孤独な彼のよすがなのでしょうか。
ラストシーンでもモモの目の前にライオンが現れ、それを見た彼は笑みをうかべ、前へと歩きだします。
このライオンの存在を明確に定義することが難しいのですが、孤独なモモに生涯寄り添う存在として、彼の人生を見守ってくれるかのようでした。
まとめ

マダム・ローザに子供を預けているローラというトランスジェンダーの売春婦が登場します。
彼女は移民ではありませんが、マイノリティであり生きていくのに必死なのは変わりありません。
社会のセーフティネットから取り残されてしまった移民・孤児・トランスジェンダーなど、社会的弱者が身を寄せ合ってなんとか生きていく様子が描かれていました。
「 これからの人生 」というタイトル通り、生きている限り、彼らは自己の身の振り方を考えなくてはなりません。
彼らの今後の運命は、私たちのあずかり知らぬところではありますが、幸あらんことを願いたい。
そんな風に考えさせられた作品でした。