
映画プロデューサー、脚本家、小説家としてマルチな活躍をされてきた川村元気氏の初監督作品。
ポン・ジュノ監督(「パラサイト/半地下の家族」)や山田洋治監督など、世界的な映画人に公開前から賞賛を浴びてきた。
注目度を象徴するように、俳優陣も豪華。
筆者も数か月前に楽しみにしていた本作、早速鑑賞してきた。
画像の引用元:IMdb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
百花


あらすじ
公開日
2022年9月9日
上映時間
104分
キャスト
- 川村元気
- 菅田将暉
- 原田美枝子
- 長澤まさみ
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
考察レビュー


川村元気氏は幼少期から父より映画の英才教育を受け、学生時代には年間500本もの映画を観ていたという生粋の映画狂。
そんな川村元気氏だけあって、映像には強いこだわりを感じる。
今作はワンシーン=ワンカットで撮影されている。
これは1つのシーンの始まりから終わりまで、1度もカメラが止められることがなく、長丁場のワンカットは役者の演技力が試されるし、スタッフも緊張を強いられる。
しかし認知症の母(百合子)の記憶の混濁や息子・泉の幼少の記憶との葛藤など繊細な感情が、地続きになった1本の映像として撮られることでより切実さを生んでいたと思う。
母(百合子)の認知症は、映像を過剰なまでにボカすことで表現されており、綻ぶ記憶の風景の儚さが痛いほどに感じられた。
映像に関して、きっと今作は渾身の出来だろう。
しかし、物語としては粗が目立ったのも事実だ。
百合子と泉は過去に大きな確執を抱えているわけだが、母親に対する泉の憎しみがあまりに薄いのだ。
それを底抜けに優しい息子とするのか、あるいは半分の花火と一緒に忘れてしまったとするのか。
もし子供は絶対に母親が好きなのだという神話に基づいているのであれば、実に安易で、あのラストシーンをイイ感じに成立させるための脚本のエゴが透けて見える。
とはいえ、その結末にしても確かに「 母が記憶を失うたびに、ぼくは思い出を取り戻して 」いった結果だが、それと過去の確執が解消するかは別の話なので、
一番大事なところを無視してエモーショナルな場面設定と映像で強引に押し切った印象が強かった。
いずれにせよ描写が薄く、底が浅い。
前述の通り映像が野心的かつ美麗な分、その描写のいたらなさが目立ってしまい残念だった。
まとめ


映像作品としては成功なのだろうし、ひどい人がひどい人として描かれないので「 誰も傷つけない表現 」として万人に広く受け入れられるのだとも思う。
しかし、希釈して綺麗な上澄みだけを見せるような映画では物足りない。
認知症を描くにしろ、親子愛を描くにしろ、もう2歩くらい踏み込んでほしかった。