こんにちは、Johnです。
映画ライフ楽しんでますか?
今回は、ペンネーム(@kaz)さんからの投稿レビューです。
「 ちひろは風邪をひかない。星に祝福された特別な水で守られているから 」
新興宗教にハマる家族を通して、人の繋がりってなんだろう?
家族ってなんだろう?
と考えさせられる作品です。
画像の引用元:IMDb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
星の子

公開日
2020年10月9日
上映時間
110分
キャスト
- 大森立嗣(監督)
- 芦田愛菜
- 岡田将生
- 黒木華
- 高良健吾
- 永瀬正敏
- 原田知世
予告編
公式サイト
作品評価
[rate title=”5つ星”]
[value 4.5]映像[/value]
[value 5]脚本[/value]
[value 5]キャスト[/value]
[value 4]音楽(BGM)[/value]
[value 4]リピート度[/value]
[value 3]グロ度[/value]
[value 4.5 end]総合評価[/value]
[/rate]
感想レビュー

好きだった点
まず、芦田愛菜の自然な演技が素晴らしい。
新興宗教にハマる両親とも自然に良好な関係を築きつつ、友人たちと普通の学園生活を送るという難しい役柄を見事にこなしていました。
芦田愛菜演じるちひろは、新興宗教にのめり込んでいく両親に翻弄されるような、いわゆる「 悲劇のヒロイン 」ではありません。
学校に行けば普通に友達もいるし、新任の先生に恋もする。
授業中は先生の似顔絵描いてるし、友人の恋に気を揉んだりする。
普通のいい子なんです。
一方で、両親の信仰も自然に受け入れている。
友人と恋話することも、金星の水(本作のキーアイテム。特別な力を持つ水)を飲むことも、彼女にとっては同じ「 日常 」です。
学校と家庭。
世俗と宗教。
2つを軽やかに乗り越える「 ちひろ 」という難役を、芦田は見事に体現していました。
演出がとても丁寧でした。
「 新興宗教にのめり込み崩壊していく家庭 」というあらすじから、少なからずおどろおどろしいシーンを想像していましたが、序盤から日常をしっかり積み重ねていく撮り方が非常に良かったです。
また、役者の演技を大事にしていると感じました。
家出した姉とちひろが台所でコーヒーを飲むシーンがありました。
姉妹の他愛のない会話を長回しで撮ることで、2人の距離の近さが表現できていると感じました。
ここまで作品の明るい面ばかり書いてきましたが、この作品はホラー要素もあります。
特にSEの使い方に非常にホラー的。
要所要所で、薄く重低音がフェードインするのですが、これが非常に怖い。
何か不幸なことが起こるんじゃないか‥ と言う間が、シーンに嫌〜な緊張感をもたらします。
この怖がらせ方、全然テイストは違いますが、アリ・アスターの「 ヘレディタリー 」を思い出しました。
実際、映画を見終わった時は緊張感でヘトヘトでした。
不穏な間に浸りたい人にはオススメです!(笑)
嫌いだった点
結末が明示されない、いわゆるオープンエンドが採用されています。
個人的には効果的だと感じましたが、人によってはしっかり結末を描いて欲しいと感じるかもしれません。
見どころ
教団側の指導者である昇子さん(演:黒木華)と海路さん(演:高良健吾)が、子供たちに説法をするシーン。
一見微笑ましいシーンなのですが、2人の常時離れした雰囲気や発言が恐ろしく、見ていて鳥肌が立ってしまいました。
このシーンについては黒木華の表情がすごい!
とtwitterでも話題になっていましたね。
中盤、友人たちの計らいで、ちひろが憧れる南先生が、自宅まで車で送ってくれるというシーン。
ここで、屋外で奇妙な儀式を実行する両親を見られてしまいます。
何も知らない先生はちひろの身を案じ「 不審者がいるから気をつけて 」と言い放ちます。
この時のちひろの表情が特に素晴らしい。
憧れている先生の気遣いを素直に喜べない、複雑な感情を見事に表現しています。
後半に向けての重要なターニングポイントで、演技やカメラワーク。
その後のアニメーション演出もあいまって、印象的なシーンは作中屈指。
考察・疑問点

ラストシーン後、ちひろはどうなったのか?
これが1番の考察ポイントかと思います。
教団「 星のひかり 」の研修旅行で、ちひろは両親に「 星を見よう 」と山奥へ連れ出されます。
山中で、3人で流れ星を見ることを目標に空を眺める父・母・ちひろ。
満天の星をバックに、不穏な緊張感を残したまま映画はエンドロールへと移行します。
真っ先に浮かんでくるのが、ちひろが両親の手によって殺されるという可能性です。
「 準備がいいね 」というちひろの発言からも分かるように、両親は周到にレジャーシートやかけ布団を用意するなど、突発的な外出にしては気が利きすぎています。
家族旅行ならまだしも、教団の研修旅行なのですから、家から持ってきたとは考えにくい。
ということは、教団側が用意したものを使っていると考えるのが自然です。
外出前にしばらく両親と会えない時間があったことからも、両親が教団側にちひろを始末するように頼まれた、と想像することは可能です。
しかし、劇中では特に戒律が厳しいという描写もなく、いきなり猟奇的な展開になるのは不自然にも思えます。
また、ちひろは「 金星の水 」によって病気を治した、教団にとっては奇跡の存在です。
社会との繋がりがあることからも、安易に手を下すにはリスクが大きいのではないでしょうか。
どちらとも判断ができませんが、私はこのシーンを物理的な殺人の前触れではなく、
家族と学校を両立してきたちひろが、ゆるやかに家族=宗教の世界に染まっていく暗示のように思いました。
ぜひ、他者の考察も聞きたいです。
まとめ

芦田愛菜をはじめとした若手の演技を楽しみつつ、最後には重いものが残る作品です。
スカっとした気分にはなれませんが、良質な体験ができるので是非ご覧になってみては?