こんにちは、Johnです。
映画ライフ楽しんでますか?
今回は、ペンネーム(@ジョナ)さんからの投稿レビューです。
男性中心社会のあり方を問う作品は、近年増えてきているように思えます。(「 82年生まれ、キム・ジヨン 」他)
今作もそのうちの1つに数えられるでしょう。
なぜ、彼女(聖山環奈)は父を殺さなければならなかったのか?
タイトルの「 ファーストラヴ 」の意味するものと併せて考えてみます。
画像の引用元:公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
ファーストラヴ

公開日
2021年2月11日
上映時間
119分
キャスト
- 堤幸彦(監督)
- 北川景子
- 中村倫也
- 芳根京子
- 窪塚洋介
- 板尾創路
予告編
公式サイト
作品評価
[rate title=”5つ星”]
[value 4]映像[/value]
[value 4]脚本[/value]
[value 4]キャスト[/value]
[value 5]音楽(BGM)[/value]
[value 3]リピート度[/value]
[value 2]グロ度[/value]
[value 4 end]総合評価[/value]
[/rate]
感想レビュー

好きだった点
どの役もキャストがぴったりハマっていたのが良かったです。
主演の北川景子は、役に入るにあたって自ら髪をショートに切り、挑んだそうです。
まさにエネルギーも酸素も使い切って演じていると感じました。
公認心理師・真壁由紀として、容疑者の女子大生(聖山環奈)を守ろうとする強さの中に、時々のぞかせる自身の弱さが自然に伝わってきました。
過呼吸の演技などは、本当にそうなっているとしか思えません。
自然といえば、夫役のカメラマン我聞を演じる窪塚洋介の「 何もしない 」演技が際立っていました。
「 GO 」の在日コリアン青年役、「 IWGP 」シリーズの池袋のキング役から始まった彼が、世界放浪の旅・瀕死からの生還・ステップファミリーとしての父親の体験を経て、
何もしていないのに大らかさが溢れていて、妻の由紀はもちろん、義理の弟・庵野迦葉のみならず、今作そのものを温かく包み込んでいました。
嫌いだった点
携帯にLINEのメッセージが数秒映るシーン、画面が暗くて文字が読めませんでした。
配信で読み直そうと思います。
焼肉屋で由紀が迦葉に髪を切ってもらうシーン。
焼肉店で働く者としては「 うーん、そこはお断りするよなあ、肉切りバサミだし 」と感じました(笑)
せめて月明かりの下の川原で切って欲しいな、と。
ただ、ラブシーンの描き方としては印象に残ったので、ありかも知れません。
原作小説では、美容室に連れて行ったようですが。
見どころ
我聞の写真展のシーン。
由紀が1枚の写真(イラクの父親と娘が優しい眼差しを向けている作品)を見て、涙を流しているのを後に夫となる作者の我聞が、理由は問わずに寄り添ってきます。
展示されている1枚1枚の写真が、言葉で言い表せないほど素晴らしいので、是非とも活目してくださいね。
ちなみに、この写真はフォトジャーナリストの佐藤彗さん、安田菜津紀さん夫妻が世界中の戦地を周り撮った写真が提供されています。
考察レビュー

なぜ環奈は父を殺さなければならなかったのか?
彼女は「 動機はそちらで探してください 」という言葉を残します。
環奈(を演じる芳根京子)の光彩を失った瞳は何を見てきたのでしょうか?
小学生の頃から、画家である父にデッサンモデルを強要され、隣には裸体の男性モデルが並んで立つという異常な光景。
母は素知らぬ顔。
大人になった環奈が、就職の面接で男性面接官に囲まれ、値定めするような視線を浴びることで、幼いときのトラウマ体験がフラッシュバックします。
男性優位主義を絵に描いたような状況から逃れるには、その頂点に君臨する父親と対峙することが必須だったのだと考えます。
彼女はクライマックスの法廷で述べます。
「 父の目が怖かった 」と。
今作のキーワードの一つは「 瞳・目 」であるかも知れません。
では、ファーストラヴとは何を指すのでしょうか?
環奈にとっては、自分をひととき救ってくれたコンビニの店員さんであり、由紀にとっては自分を受け入れてくれた我聞なのかも知れません。
かも知れないと書いたのは、彼女たち自身も含めて誰も答えは分からないし、明かされないからです。
その「 分からなさ 」こそ、今作の魅力でしょう。
uruによる主題歌は、彼/彼女/私たちを神々しい歌声で優しく包み込むようでした。
エンドクレジットでの「 ファーストラヴ 」の歌詞に耳を傾けながら、しみじみと思いふけるのも良いですね。
まとめ

男「 らしさ 」、女「 らしさ 」、「 普通 」の家族というカッコ付きのものが、少なくない人を苦しめている現状において「 らしさ 」や「 普通 」とは何かを考え直すことが大切だと思いました。
今作は、サスペンス・ミステリーというよりも、時代の空気感のおかしさを突きつけている良質なヒューマンドラマだと感じました。
島本理生の原作小説を併せて読むと、さらに立体的に楽しめるでしょう。
同作家による「 Red 」も映画化されていますね。