「 Eggs 選ばれたい私たち 」これは監督の体験談
こんにちは、Johnです。
映画ライフ楽しんでますか?
今回は、ペンネーム(@シイノ)さんからの投稿レビューです。
まもなく30歳になろうとしている独身主義者の女性と、同性愛者の女性。
いわゆる家族や世間が望むような「 女性 」として生きていけない主人公たちの葛藤が描かれた作品です。
不妊に悩む夫婦に自らの卵子を提供するエッグドナーを題材とし、女性の生き方や「 タイムリミット 」についてまで、深く鋭く突っ込んだ内容となっています。
たとえ独身主義者や同性愛者でなくても、女性ならば、主人公をはじめとした登場人物たちに、
思わず親近感を抱いてしまうことでしょう。
画像の引用元:IMDb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
公開日
2021年4月2日
上映時間
70分
キャスト
- 川崎僚(監督)
- 寺坂光恵
- 川合空
- 三坂知絵子
- 湯船すぴか
- 新津ちせ
- みやべほの
- 見里瑞穂
- 斉藤結女
- 荒木めぐみ
予告編
公式サイト
作品評価
[rate title=”5つ星”]
[value 5]映像[/value]
[value 4]脚本[/value]
[value 3]キャスト[/value]
[value 4]音楽(BGM)[/value]
[value 3]リピート度[/value]
[value 1]グロ度[/value]
[value 4 end]総合評価[/value]
[/rate]
感想レビュー
主人公の純子や純子の周りの友人、そして冒頭に登場するエッグドナーの希望者たち、各々の描写がとてもリアルな作品です。
登場人物たちに、自分を重ねる人も多いのではないでしょうか。
独身アラサー世代の女性ならば、共感を覚えるシーンや会話が多く登場します。
少し上の女性世代ならば「 自分にも、あんな時代があったな 」と、過去の自分を見るような気持ちになるかもしれません。
この作品が、生々しいくらいリアルなのには、メガホンを取った川崎監督の存在が大きく影響しています。
名前だと分かりにくいのですが、川崎僚監督は1986年生まれの女性監督です。
エッグドナー登録や、婚活、女性が30代前後に感じる焦りや不安、家族からのプレッシャーなど、劇中に描かれていたものは、すべて川崎監督自身が経験してきたことなのです。
だからこそ、見ている側の胸が締め付けられるくらいの共感を得られる作品になったのでしょう。
子どもを産むにしても、エッグドナーに登録するにしても、そして婚活を始めるにしても、女性は年齢というものが重要視されるのは周知の事実です。
また、これらには、どこか「(女性が何かから)選ばれる 」というイメージも付いて回ります。
だからこそ、映画のサブタイトルである「 選ばれたい私たち 」という言葉に胸を突かれたような気がした女性も少なくないのではないでしょうか。
冷静に考えると、世の中は性別関係なく、人も物も「 選ばれること 」で成立しています。
しかしながら、男性よりも女性の方が年齢を基準で選ばれることが多いのは事実であり、またマ
スメディアなどでも面白おかしく、その事実を取り上げるために、必要以上に女性たちが自分の年齢に対して焦燥感に駆られたり、悲壮感を抱いてしまう傾向があります。
「 年齢で選ばれる 」という事実以外にも、女性の生き方が多様化してきたとはいえ、やはり世間が求める女性像は、未だに古い固定概念に捕らわれてるの事実です。
その事実は、2021年を生きる女性たちを今もなお苦しめています。
劇中にも取り上げられているように、同性である母親にその事実を押しつけられることも多く、「 娘 」である女性たちに強いプレッシャーをかけているのです。
今作ではエッグドナーを題材にすることで、前述したような女性の問題やプレッシャー、葛藤などを自然に取り上げることに成功していた作品といえます。
同時期に、エッグドナーの登録をした純子と葵のふたり。
独身主義者の純子も葵も、結婚して子供を産み育てるということが現実的でないからこその選択でした。
エッグドナーに選ばれるために、街ではしゃぎながらお互いの写真を撮り合うシーンでは、映像とは無関係な、2人の会話音声が流れます。
実はこの会話が、後の展開の重要なキーとなるのですが、音声だけだと純子と葵の声が聞き分けることができず、
重要なシーンで観客が慌てて状況を理解するという展開になり、非常に勿体なく感じました。
純子の従妹である葵は、同性愛者でありながらエッグドナーで子孫を残そうとする非常に興味深いキャラクターです。
彼女が純子と毎月無駄になる卵子や、閉経を迎えるまでの生理用品の費用総額について話すシーンは、微笑ましささえも感じられます。
それにも関わらず、中盤から天真爛漫を通り過ぎて、自己中心的で被害妄想が強く、ややメンヘラ気質な人物に感じられ、少々鬱陶しくも感じられました。
彼女の不安定さを表現するための演出だったとしても、少々やり過ぎだったように思います。
後半から多く用いられるインサートに関しては、少々ダイレクト過ぎるのと頻繁に登場し過ぎる点が少々気になりました。
視覚に訴えかける効果としては非常に印象的なものでした。
まとめ
70分という短さのなかで、女性の生き方への未だに消えない固定概念と、その押し付け、年齢というハンデ。
そのプレッシャーなどを、ここまでシンプルかつ明快に描いた作品は、なかなかあるものではありません。
女性に限らず「 選ばれる 」ことに疲れたり、プレッシャーを感じている男性にもみて欲しい。
ラストで純子の呪縛から解き放たれたかのような笑顔には、老若男女関わらず、多くの人が救われることでしょう。