映画ライフ楽しんでますか?
今回は、ペンネーム@シイノさんからの投稿レビューです。
Netflixらしい攻めた演出と豪華絢爛な衣装や建築・内装は、かなり見応えがあります。
LGBTQに関して様々な問題提議がされる昨今の世の中。
性的マイノリティの人々が、如何に社会から虐げられていたのかを学ぶという点において、良い教材となりうる1本と言えるでしょう。
ダンス・オブ・41

公開日
2021年5月12日
原題
El baile de los 41
上映時間
99分
キャスト
- ダビド・パブロス(監督)
- アルフォンソ・ヘレラ
- エミリアーノ・スリータ
- マベル・カデナ
- フェルナンド・ベセリル
- パウリーナ・アルバレス・ムニョス
予告編
公式サイト
作品評価
- 映像
- 脚本
- キャスト
- 音楽
- リピート度
- グロ度
- 総合評価
感想レビュー

好きだった点
メロドラのように華やかな雰囲気で始まり、オープニングからセットや衣装の華やかさに心が奪われてしまいます。
屋敷の幻想的な美しさと豪華さには圧巻。(主人公も所属する秘密クラブのメンバーが集う屋敷)
この屋敷で見せるイグナシオの顔は、妻や義父、仕事関係の人間に彼の顔とは全くの別物。
同性愛者である彼にとっては、唯一、自分らしくいられる場所だったに違いない。
嫌いだった点
最後までイグナシオに同情・共感できなかったのが本音です。
真実の愛を失ったとはいえ、全てはイグナシオの行動が原因ですし、彼のせいで多くの人が不幸になったことを考えると、ラストで彼が流す涙に対して、
素直に感動も共感も覚えることができませんでした。
最後の最後に気になったのが、逮捕者が送られた「 ユカタン 」という場所。
日本人には馴染みのない地名ですが、実は当時のユカタンは戦争の真っ最中。
つまりは、逮捕された人々は戦地に送られたわけです。
メキシコでは有名な戦争なのかもしれませんが、日本人では知っている人は稀なのではないでしょうか。
ラストシーンにも繋がる重要なポイントなだけに、後から知ってちょっと衝撃、かつ残念に思いました。
考察レビュー
1901年のメキシコは、同性愛者が弾圧された時代。
政治的野望のために、大統領の娘と結婚した彼にとって、絶対に隠し通さなくてはいけないものでした。
「 バレてはいけない 」という思いがスパイスになったのか、イグナシオとエヴァの恋はすぐに燃え上がります。
エヴァに向けるイグナシオの愛の深さは、画面越しからも伝わるほど。
そんな2人の姿を見ていると、ベッドの中で喘ぎながらも、自分を見ようとしない夫の視界に、何としても入ろうとするアマダ(妻)が、あまりに哀れに思えてきます。
しかし、このアマダの存在がなければ、今作の面白さは半減していたといっても過言ではありません。
イグナシオと結婚したばかりで夢いっぱいの新妻から、夫の帰りを待ち、耐え続け苦悩する妻となり、そして最終的に愛されることはないと諦め、
開き直ったような逞しさを身につけるといった具合に、劇中での彼女は目まぐるしく変化していきます。
劇中ラストで、ある事実を淡々とイグナシオに告げる彼女からは、冒頭に見られたような愛情は一切感じられません。
そこにいるのは、ただ世間体を保つためだけに一緒にいる夫婦。
告げられた事実に涙する夫のことを気にかけず、朝食を食べながら休暇の話を続けるアマダの姿からは、生きていくための強さが感じられます。
彼女のその強さは一体どこから来ているのでしょうか。
おそらく、それはアマダの生い立ちが大きく影響しているのではないかと思います。
大統領の娘ではあるものの、先住民の母親を持つマイノリティ側の人間だったアマダ。
劇中では、彼女の異母妹が登場したり、家族や親族の仲が決して良好でないことが伺えるシーンや、アマダが夫婦関係に関して見栄をはるシーンが出てきます。
幼い頃からマイノリティの立場で生きてきた彼女だからこそ、結婚生活は絶対に失敗できない。
そう考えると、彼女の行動や強さにも納得がいきます。
実は、夫婦揃ってマイノリティ側の人間だったイグナシオとアマダ。
もし同性愛や人種差別に関しての偏見や弾圧がなければ、2人の人生は大きく違ったことでしょう。
まとめ

主人公に共感しにくいなど、気になる点はありますが、劇中の建築物やセット、衣装などは豪華絢爛です。
劇中ラストのダンスパーティから、その結末までの流れが実に劇的で片時も目が離せません。
タイトルの意味が分かるシーンでは、静かな興奮さえも味わえます。
実話がベースということもあり、性的マイノリティの弾圧ばかりが話題になりますが、それ他の見どころも満載。