「 朝が来る 」考察レビュー、血縁関係がなくても人は家族になれるのか?
こんにちは、Johnです。
映画ライフ楽しんでますか?
今回は、ペンネーム(@ayahhi)さんからの投稿レビューです。
養子縁組を巡るそれぞれの立場の辛さ、痛みに共感して涙が止まらない、現代社会の現実も描いた忘れられない1本。
画像の引用元:IMDb公式サイトより
(アイキャッチ画像含む)
朝が来る
公開日
2020年10月23日
上映時間
139分
キャスト
- 河瀬直美(監督)
- 永作博美
- 井浦新
- 蒔田彩珠
- 浅田美代子
予告編
公式サイト
作品評価
[rate title=”5つ星”]
[value 4]映像[/value]
[value 4]脚本[/value]
[value 5]キャスト[/value]
[value 3]音楽(BGM)[/value]
[value 3]リピート度[/value]
[value 1]グロ度[/value]
[value 5 end]総合評価[/value]
[/rate]
感想レビュー
好きだった点
養子である子どもを真心を込めて育てる栗原夫婦の姿が尊かった。
血縁があってもなくても、人は家族になれるし互いを大切に、尊重しあって暮らすことが大切なのだというメッセージが込められているように感じました。
嫌いだった点
養子を育てる条件として「 夫婦のどちらかが子育てに専念できること 」 というのがあり、共働きの場合はどちらかが仕事を辞めなければならないルールがあります。
共働き=子どもへの愛情が不足する
という印象を与えかねないので、 新しい家族の形を描くならば、そこは丁寧に描いて欲しかったです。
また、仕事を辞めるのが女性であることに特に違和感は描かれていませんが、
収入が少ない方(=多くの場合女性)が仕事をあきらめることが普通であり、その結果女性に育児がのしかかり、
子育ての負担が増えていくということが当然として描かれている点は残念。
仕事を持つ女性として、葛藤があるはずなので、 そうした描写があっても良かったのではと思います。
主題歌の「 アサトヒカリ 」という曲がややしつこいくらいに出てきて、ヒットさせようとしている無理やり感がやや気になりました。
見どころ
不妊治療先の札幌への飛行機が欠航になった時 「 もう治療をやめよう 」となぐさめるように言い出す妻に 「 やめたいって言いだせなかった 」と涙する夫。
自分の描いた幸せに対して、前向きというよりは執着してしまうことによって、精神的に追い詰められる苦しさが伝わってきました。
特別養子縁組という選択肢を得て、息子を迎え入れ幸せに暮らすようすが、本当に微笑ましく苦しみから解放されて良かったと温かい気持ちになりました。
養子であることを朝斗本人にも伝え、胸を張って、真摯に子どもに向き合う夫婦の奮闘ぶりは応援したい気持ちでいっぱいになります。
一方で、せっかく好きな人の子どもを授かったのに、状況がそれを許さず、他人に差し出すしかなかった女性の切なさや悲しみが胸を締め付けます。
どちらも痛みがあり、辛さがあり、どちらにも共感せずにはいられません。
考察・疑問点
原作は「 ミステリー 」ということですが、純粋で光り輝くようだったあかりが不遇の時期を経てあまりにも変わり果て、
うらぶれてしてしまった姿に「 あなたは誰? 」と、問うシーンがミステリー要素だと思います。
しかし、私にはこの作品は全くミステリーではないと感じました。
どちらかというと、女性の悲しみがドキュメンタリーのように胸に迫りました。
事情があって、出産した子を養子に出す女性たちの境遇はさまざまです。
あかりのように、好きな人の子を身篭った人もいれば、そこしか生きる道のなかった風俗で誰の子かも分からない子を産む人、もうすぐ産まれてくる子を全く可愛くないと言い放つ人。
これが現実なんだとを重く感じます。
印象的だったのは、風俗で妊娠し、出産した子どもを養子を出す女性が、 養子を望む経済的に恵まれた人達に対し、
「 全てを手に入れようとするんだな、と、なんだか恨めしい気持ち 」
「 でも、彼らがいなければ子どもは育てられない。自分では無理。なのに、なんで嫉妬してるんだろう 」
と涙ながらに話すシーンです。
持つ者(経済的、社会的に恵まれている人)は多くを望み、そして叶えていくこと。
持たざる者(貧困層、社会的弱者)はすべてを失いやすいということ。
養子を迎え入れるために退職を迫られるのも、就職しても低賃金になりがちなのも出産で体を痛めるのも、育児で疲労するのも女性、
という女性の辛さ、やりきれなさも裏テーマとして描かれているように感じました。
まとめ
マスクが涙でびしょ濡れになるくらい、涙が止まらない良作でした。
観客は女性が圧倒的に多いのですが、男性にもぜひ見てもらいたいです。
その中で、家族のあり方や、子どもを幸せにすること、子どもがいてもいなくても、自分を満たすことなどについて考えるキッカケになればいいなと感じます。